東日本大震災行方不明者捜索活動協議会2020
2. 名取市閖上地区捜索活動 - さまざまな捜索手法の挑戦
復興支援プロジェクトSTEP 副代表 五十嵐 悟
私たちがこれまで行なってきました捜索活動の「7年間のあゆみ」といえる概要です。
1、閖上側溝捜索
2013年3月~2015年3月にかけて、甚大な被害を受けた名取市閖上地区のすべての雨水側溝内を捜索



2、閖上浜地中レーダー探査捜索
2014年9月~現 在、津波で砂浜に埋まっている可能性のある手掛かりの捜索(仙台高専園田教授協働)



3、嵩上げ工事内の捜索
2015年2月~2020年2月 閖上地区復興土地区画整理事業に伴う不明者捜索(事業請負民間業者協働)



4、嵩上げ工事外の捜索
海中捜索、水門捜索、その他(宮城県行方不明者捜索チーム他協働)



広浦湾、貞山運河、閖上浜における捜索方法

オレンジの部分がかさ上げ工事エリア、ピンクの部分が閖上浜エリア、赤い線が貞山運河、そして、青い部分が広浦湾です。
活動範囲としましては、約4~5kmになります。
この地図をイメージしながら、以降の内容をお読みください。
さまざまな挑戦
以下の3項目が、かさ上げ工事区域外での捜索活動です。
2020年度以降に推進し、「さまざまな挑戦」と題しまして、活動していく捜索手法になります。

広浦湾のデプスマッピングと海底調査 2020年2月より開始しております。

貞山運河浚渫工事に伴う行方不明者捜索、現在、開始時期は未定です。

ドローン活用による捜索手法の開発協力、昨年の2月より開始しております。
広浦湾デプスマッピングと海底調査
広浦湾デプスマッピングと海底調査について。
STEPでは、ホンデックス社製の魚群探知機HE-9000を導入しました。
小型ボート船上より、デプスマッピング®と、サイドスキャン、ワイドスキャンによる海底調査を行います。

HE-9000は、GPSプロッターによるデプスマッピング機能、サイドスキャン(400kHz)と、ワイドスキャン(400kHz)、 一般的な2Dの魚群探知(200kHz)、水温センサーなどの多くの機能を搭載した多機能オールラウンドなタイプの魚群探知機です。
モニターに、ひとつの機能の表示だけでなく、複数の機能を同時に表示することが可能です。
(※機能説明は、ホンデックスのサイトよりの引用)
特徴①:サイドスキャン
代表的な一つ目の特徴といたしましては、サイドスキャンという機能です。
サイドスキャンは、横方向に広く、前後には極めて狭いビームを左右に発射して、広範囲を細かく切り刻むようにスキャンして作り出される映像です。
ボートをゆっくりと走らせることで、水中写真のような映像が得られます。


上記画像は、デモを行わせていただいた、SEA社の3DSSとHE9000との比較です。
左の画像が3DSSのサイドスキャン画像、右側がHE9000のサイドスキャン画像です。
ご覧のように、鮮明さではHE9000の方が落ちるものの、十分水底の様子を見ることができます。
カタログ値では、感度設定により、水深40mまでの測定が可能となっております。
特徴②:ワイドスキャ ン
二つ目の特徴といたしまして、ワイドスキャンについてです。

サイドスキャンの情報に、深さの情報を組み合わせて、3D的な画面表示をしてくれる機能です。
船上でサイドスキャン画面を見ると、低層にあるように見える物体が、ワイドスキャン画面上では、中層にあることが確認できます。
特徴③:GPSプロッター(デプスマッピングⓇ)
三つ目の特徴は、GPSプロッター、デプスマッピング®です。
魚群探知の深度情報と、GPSの位置情報を利用して、モニター画面の地図上に、海底の地形を描写する機能です。
デプスマッピングはホンデックス社の標章登録です。他メーカーでは、同じ機能でも、名称が異なります。

デプスマッピング®では、一般的な地図では表現されない、海底の起伏や漁礁などが等高線のように可視化できます。
得られたデータをもとに、最深50mまでを深さ50㎝間隔で色分けして表示します。
左上の画像のように、ボートの進行に伴って得られた帯状のデータを、右上の画像のように合成して、海底の地形を描写していきます。

2020年の挑戦
・閖上地区広浦湾においてデプスマッピング® による海底深度地図化を実施
→行方不明者の手掛かり発見に伴うヒントを捜す。
・デプスマッピング等のデータ変換し、外部アプリ開発活用にチャレンジ。
(現状はビデオ撮影のみ。映像外部出力不可能)
・閖上地区での実績をもとに女川湾で試行。
貞山運河浚渫工事に伴う捜索
貞山運河浚渫工事に伴う捜索についてです。
閖上から南への貞山運河を、船舶が往来できるように浚渫しようという計画があり、仙台土木事務所が発注しております。
幅24m、船舶航行に必要な深さ、海抜マイナス1.4mの浚渫工事で、それに伴い、土砂3980立方メートルが発生します。
その土砂を、私たちの手で捜索確認できないものかと考えております。
仮設の土砂置き場、施工ヤードは3か所設定されており、ヤード①はSTEP機材倉庫PALに隣接して おります。

・側溝捜索を超える土砂を人海戦術で捜索する。
・STEP機材倉庫PALと隣接しているため移動手間が
少なくスムーズに捜索が可能。
・人員確保が課題。
〔現状〕
・施工ヤード①の範囲をSTEPが捜索したい旨を名取市を
通じて仙台土木事務所に相談中。
・台風19号の影響で工事が遅れている。
・新型コロナウィルスの影響で遅れている。
活動時期は未定。
発注者と調整の上決まり次第開始する予定。

ドローン活用による捜索手法の開発協力
園田研究室、金澤研究室が行っておられる調査研究において、月1~2回。ドローンでの空撮を協力しています。
高度10mで340m×100m=34,000平方メートルを実施しています。3.4haの範囲を空撮に、概ね3時間かかります。
ドローンで自動定点空撮したデータをアップロードし、豊橋技術科学大学 金澤研究室に送る流れです。

金澤研究室の意向により2020年も継続実施
仙台高等専門学校の園田研究室の意向により、定点空撮範囲の拡大も行いま す。
小型ドローン導入により機動力をアップさせます。

最大高度30mで図のような広範囲での撮影を行います。

2020年よりSTEPが代行しておりますが、すでに、仙台空港事務所運行情報官、仙台国際空港飛行場情報チーム、仙台空港管制への飛行申請手続きも完了しております。
2020年度の捜索活動予定
最後に私共STEPの活動予定についてです。
昨年度は主に第3日曜日に活動してまいりましたが、今年度は第2日曜日中心となります。
貞山運河の浚渫土砂捜索が始まるま では、閖上浜の表層捜索をいたします。
